Adobeです。クリエイティブクラウド略してCCなるものを発表しました。
1年前に「今後製品版とクラウド版の両方を提供していきます!」と自信たっぷりに宣言して舌の根も乾かぬうちに「全てクラウドのみ」となったようです。
あーあ。とうとうこうなっちまったか。
ユーザー数減少が止まらないためか、社内のコストダウンのためか、理由はわかりませんけどとにかく「囲い込んだユーザーから定期収入を得る」という、商売人なら最も憧れる金の搾り取り方に注力する決断をした模様。
ものの売り方にはふたつのパターンがあります。売り切りと定額の契約です。
定期契約のおいしさはこれはもう誰もがご存じですね。黙っていても毎月毎月勝手に金が転がり込みます。公共料金屋さんになりたいと誰もが憧れたでしょう。税金を搾り取る立場に立ちたいと誰もが夢みるでしょう。そうです、定期収入は夢の収入源です。
Adobeも憧れの定期収入への路に突き進みます。
さて、ものを売って商売すると、よっぽど魅力的な製品を用意しないと買ってもらえないので開発には才能やコストがかかるしギャンブル的ですらあります。実際に魅力的な製品を投入できないとあらば、おのずと他の方法を模索することになります。
そこでまずAdobeは「バージョンアップを強制的にさせる」作戦に出ました。
最初はどのバージョンからでもアップグレードできたものを3世代以内に絞りました。ユーザーは慌ててアップグレードしましたが副作用もあって「3世代に1度でいいや」と、醒めてしまいました。例えば、それまでは毎回嬉々としてアップグレードしていた私のような粗忽なユーザーでさえ「3回に1度でいいや」ってなってしまいました。
そこで、これではいかん、と奮起して「バージョンアップは前バージョンのみ」という暴挙に出ました。客から文句は出ますが、文句ぐらいいくらでも言わせておけって感じで、アップグレードをサボっていたユーザーは毎回アップグレード代を払う羽目になりました。
しかしこの改悪の副作用でまた一気に客が離れた模様で、そうなると既存ユーザーからのアップグレード代だけではAdobeの収入が足りません。アップグレードは2年に1度ぐらいしかできないし、そうそう魅力的な製品も作れませんから、毎月課金の夢の収入源にかけるしかなくなります。
毎月課金ならアップグレード代より結果的に多く取れるし、魅力的新機能を生み出す苦しみから逃れられます。これはいい!これでいこう。
と、そのようないきさつがあったのかなかったのか、とにかくAdobeのソフトは毎月課金の「使用契約」という形態に変わりました。もうユーザーにとってはソフトウェア資産ではなく、リース契約と同等の「毎月の経常費用」となります。会社にとってはそのほうが都合良い場合もあることでしょう。ただし結果的には大幅な値上げになります。ここポイントですよね。値が下がるのならユーザーも歓迎しますからね。
定期収入という夢の集金システムに囲い込むくせにユーザーに値下げのメリットがないというのは、もうこれだけで信頼関係ぼろぼろです。
こういう大きな改変は、メーカーとユーザー両者にとってメリットがあってはじめて「やんややんや」と歓迎されると思うのです。
かつて一般のユーザーを巻き込んで拡大してきたAdobeのグラフィックソフトは「グラフィックユーザーの拡大」という数を売る路線から決別し、コピー機リースや高額CADソフトのような、少数のプロユーザーがきっちり搾り取る方向へと完全シフトしました。
そういえばあまり詳しくないですがゲームの世界でも似たことが起きていますね。
ドラクエはかつて国内で500万本売り上げるソフトでしたが、500万本売り切るより、ユーザー数の桁を減らしてでも、課金ネットゲームにして定期収入を得るほうが儲かるという決断をメーカーがやらかしました。
このため、ドラクエ10を体験した人の数は劇的に減り、以前のような「国民的ソフト」なんて言われ方はしなくなりました。一部のユーザーがネット契約して毎月払い続けているので、メーカー的には利益が上がっているだろうと思われます。
Appleはこれらとは真逆に、Final Cut ProやApertureやLogic Proをプロ価格からリーズナブルな価格に下げて敷居を下げましたが、ユーザーにとって嬉しくても果たしてこの路線に見合う十分な数が売れているのかどうかはわかりません。どのプロソフトも開発が危ぶまれたりしていますから、この路線はあまり儲からないのであろうと思われます。がんばってほしいんですけど。
商売的にはたとえ少数でもユーザーから定期収入を得るのが上手く儲ける秘訣です。値上げしてもついてくるし、いくらでも搾り取れます。いわゆる足抜けできない世界に囲い込んでお布施を強要するやり方ですね。比喩として昔から言われてきましたが、まさに今、商売は宗教と同等のやり口を身につけてきています。
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さて、上の方で「ユーザーにとっては値上げ」と書きましたが、もちろん個別の事情によります。
例えばCC契約は年間60000円、2年で12万円です。
大きなアップグレードがだいたい2年に1度ありましたから「必ず毎回アップグレードしていて、2年で12万円以上払い続けてきていた人または会社」にとっては値上げにはなりません。
また、新規のユーザーの場合はまた話が違ってきます。
「囲い込まれ支払い続ける」ことをどう受け止めるかによっても変わってきます。解約すればソフトが使えなくなりますから、同じ金額でも購入することとは意味合いが随分異なります。
私なんかは古い人間ですので、契約中だけ使える仮の使用権が買いとりと同額であればそれは十分に「高すぎる」と考えてしまいます。そんなことに価値の差を見いださない人にとってはどうでもいいことでありましょう。
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というわけで単純にいくらがいくらになるのかの目安ですが。
仮にアップグレードが2年に1度だっとすれば、ということで2年分の価格です。
- Master Collection 129000円
- Production Premium 94000円
- Design & Web Premium 94000円
- Design Standard 67000円
… Creative Cloud 120000円
Master Collectionを毎回必ずアップグレードしていたユーザー以外は軒並み値上げです。
すべてのユーザーをMaster Collectionユーザーにしてしまうのと同じような結果になりますね。
単体ユーザーだと以下です。
- Illustrator、Photoshop 25000円
- After Effects、Photoshop Extended 39000円〜46000円
… Creative Cloud 52800円
くどいですが、これは購入ではなくてあくまで契約期間内に使用できる権利ですからね。解約して支払いを辞めれば一切使えません。
いわば無限レンタルです。償却期間が決まってるリース契約ですらありません。
ビデオレンタルに例えて言うと、4000円で販売していたビデオタイトルを8000円でレンタル専用にした、というような状況ですね。
とても激しい値上げだと言うことがわかります。しかも独占的な位置にいますから、今後の値上げもやり放題、去年言ったことを反故にするのも得意技、信用という言葉はAdobeの辞書で見つけるのは困難です。