メディア管理のアプリを見つけては試して寸評しております。今回はRAW Power というRAWファイルが得意そうなアプリです。
RAW Power for macOS
RAW Power は写真編集・写真.app拡張を名乗るアプリです。写真.app拡張とは何のことでしょう。よく分かりませんが、ここでは写真管理アプリとして捉えての寸評となります。
無制限の評価版
トライアル版が用意されていてフル機能を試すことができます。素晴らしいのは、試用版に時間制限がありません。書き出しサイズの制限、編集やエクスポート時の透かしなどいくつかの制約があるだけです。管理アプリとして使うとすれば、制約など何もないフリー状態であると言えましょう。
ビューア
起動して最初の画面はこうです。何をすればいいのでしょう。「インポート」ボタン、ありません。「読み込み」ありませんね。そういった類いのアプリではないのです。
正解は「Add Folder」でフォルダを選んでブラウズします。
Add Folder
「Add Folder」を選ぶとダイアログが出てきて、フォトライブラリかフォルダかを選びます。Photo Library を選んだら100%クラッシュします。もしかしたら写真.appをシステムフォトライブラリに設定している場合のみ機能するのかもしれません。「写真.app拡張アプリ」と名乗ってますからね。写真appに興味ないんで、普通にFinderのフォルダを選択してブラウジングしましょう。
外観
画面の色は黒いグレーでライトモードも普通のグレーモードもありません。素っ気なくDAみたいな外観です。DAではわからんか。アクセサリみたいな感じ。
黒さはきつくはなくダークグレーですから目が潰れることはありません。でも暗い外観は暗い気持ちになるので私個人は強く嫌っています。
Finder代替
さてフォルダを選択してブラウズします。普通の画像管理ソフトのようにサムネイルが並びます。速度も申し分なし。このアプリの良いところは、快適ブラウジングですね。
ただし注意が必要で、実は表示しているのはカタログでもデータベースでもなく、Finderの代替です。このアプリは管理アプリではなくFinderビューアにすぎません。ブラウザ上の操作は実際のファイル操作に相当します。削除すれば、それはそのままFinderで削除する行為と同じです。移動はできないみたいですね。ただ見るだけって感じです。
サムネイル
サムネイルの大きさ指定は最小〜最大を選択するダサい仕様でちょっとへこみます。
サムネイル <–>プレビュー
サムネイルをダブルクリックすれば大きなプレビューが表示され、その状態でダブルクリックすると拡大されます。その後は縮小と拡大のトグルで、元のブラウザ画面に戻ることができません。
なぜどいつもこいつもブラウザに戻らない仕様なんだろう。
拡大画面では余計なサムネイルが下方に表示され、このサムネイルをダブルクリックすることでブラウザ画面に戻る仕様です。
この何か根本的に間違っているUIをましに使うにはショートカットを使います。装飾キーなしの V キーでブラウザとプレビューを行き来できます。単キーショートカットにより、マウス操作より快適に操作できるとも言えます。
左ペイン
左ペインには Add Folder で選択したフォルダが示されます。ダサいツリー表示でないところは好感持てますね。フォルダの展開もFinderに準じた▲マークになってます。
「すべて表示」ができない
フォルダを登録してブラウズするのはいいですが、複数のフォルダを選択することができません。シフトキー押しながら選択しても無効です。「すべて表示」ができない画像管理アプリなんて初めて見ました。これはあまりにもちょっとどうかなと思わずにおれません。
フォルダ内のサブフォルダを見ることはできます。
サブフォルダに対応しているのはいいのですが、じゃあ結局、多くのフォルダを一望したい場合 Add Folder でボリュームを選択するしかないじゃないかとなります。で、それをやってみると爆裂的に大量のファイルを登録することになり、さすがに延々作業が終わりません。それでもボリュームより上の階層を選択できないから「すべて表示」を実現することはできません。
つまり結論はこうです。
その時々で必要フォルダを読み込んでブラウジングするという使い方しかできません。
管理とはほど遠い
先ほど、このアプリは管理アプリではなくFinderビューアだと言いました。そのことを痛感するのがフィルタやメタデータに関する機能です。非常に貧弱、ないに等しいです。
ボタンに割り当てられているのは旗と星とタグだけ。タグはFinderのカラーラベル機能そのものですから迂闊に使えません。
フィルタボタンもありまして、こちらはもう少しだけフィルタ機能が追加されています。日付やファイルタイプです。
メタデータは一切なし
キーワードも付けられませんし、見出しやコメントやコピーライトも追加できません。そういう欄すらありません。メタデータに関する機能が一切ないのですね。
選択して追加したフォルダだけのビューアで、「すべて表示」すらできません。メタデータも扱えないしフィルタは貧弱、先ほどの結論を補完する要素しかありません。つまり、管理機能はありません。結論として、このアプリでは画像を管理できません。
という、画像管理アプリとして見るとまったく使い物にならない RAW Power ですが、Finder補助のビューアアプリと正しく認識すると決して悪くないです。限定フォルダだけならさくさくブラウズできるし、単発のフォルダ専用ビューアとして使う分にはありでしょう。
編集
クロップ、カーブ、ホワイトバランス、LUTの適用など、プレビュー.appより高機能な編集を行えます。
非破壊編集で、いつでもオリジナルに戻すことができます。これはいいことです。Finder + プレビュー.app とはここが違います。
さて本当のことを言いますと、RAW Power は画像管理アプリではもちろんなくて、Finderビューアアプリでもなくて、単なる写真編集アプリです。編集するためにフォルダを読み込むことができるというレベルにすぎません。
この考え方は Luminar と同じですね。一見、外観が画像管理アプリに似ているから「管理機能はどうだろう」と興味を持ちましたが、そもそもお門違いであったというしかありません。
このアプリは多くのカメラに対応したRAW現像や非破壊編集が売りです。もっと言うと、ApertureのRAW処理エンジンと同じ処理を行うことや、写真.appと連動したマーキングこそが自慢です。写真.appなんかと連動させることに何か意味あんのかと思わなくもないですが、そういうアプリなのだとガッテンすることで、それなりの使い勝手が得られるかもしれません。
万が一の可能性として、将来の更新で管理機能が充実していくことも考えられなくはないですが、管理機能やメタデータの扱いは多少の改善ではどうにもならないレベルですから期待しても無駄と思います。
まとめ
管理アプリと捉えるとどうにもなりませんからこの稿では貶しているように受け取られるかもしれませんが、アプリの目的を見誤らなければ悪くない使い勝手だと思います。
RAW現像や非破壊編集をするためにその都度フォルダを読み込んでさくさく作業。そういう使い方が正解。