名機PM-4000PXが壊れたので焦ってPX-5V2というのを買ったんですが、まあ皆さん、私は知らなんだ。プリンターって、今はえぐいことになっておりますねえ。
PM-4000PXを15年も使えたのは名機だったからに他なりません。使い方は乱暴の極み、埃とヤニにまみれ工事現場にまで持っていったりガチャコンとぶつけたりしていましたが簡単なメンテで長年使えました。
これがついに壊れたという哀しいお話を「さようならPM-4000PX」に書きましたが感傷に浸っている暇はありません。
ほんとは同じ機種をオークションか中古で買いたかったのですが何しろ急いでいたので暢気に入札したり中古を探してる場合ではなくPX-5V2を買ってしまったんです。そこで知った最近のプリンター事情。
かつてハードウェアは屈強でした。そして融通が利きました。便利でいいものをメーカー作っていました。今は酷いもんですね。
廃インクタンクがメンテできない
インクジェットてのはインクをどぼどぼ垂れ流します。それをスポンジのようなもので吸って、いっぱいになれば廃インクタンクをメンテしなければなりません。メンテが必要になったとき、今時のプリンタは機能を停止して使えなくさせます。
インクが溢れこぼれてでもプリントをしなければならない局面もあります。しかし廃インクタンクが満タンになれば問答無用でプリンタを止めてしまうんですって。メーカーに送って修理とメンテをやって貰わないかぎり使えないんですよ。なんですのそれ。
じつは満タンじゃない
廃インクタンクの満タンをチェックしているわけではなくて、カウンタで適当に「そろそろだよね」などと判断してプリンタを止めるという。数を勘定しているだけなんだとか。
4000PXも同じような仕様でしたが、ボタン長押しの裏技*でユーザーがリセットできました。今時のはハードウェアにリセットキーが割り当てられておらずユーザーは手も足も出ません。
* ロール紙と用紙ボタンを同時押しして起動→LED点滅したら両方離す→ロール紙ボタンを長押し→点滅が終わったら離す
9色のインクにノズルが8本
PX-5V2は9色ものインクをセットしなければなりません。しかしインクの通り道であるノズルは8本です。マットブラックとフォトブラックを切り替えて使い分けるそうです。
で、この切り替えの時ノズルが足りないからインクを使って掃除する仕組みです。充填された前のインクを交換するインクを使ってどぼどぼどぼと洗い流すんです。わお。
PM-4000PXもマットブラックとフォトブラックを交換する同じ仕様でした。15年間、マットブラックを一度も使ったことがありません。そして、15年経っても同じヘッポコ仕様のままというのに驚きます。
PX-5Vという前機種では、用紙によって強制的にインクが交換されてしまいこれをユーザーが回避することができない仕様だったそうです。ほんとにそうなのか確認していないので知りませんがもし事実ならこんな酷い仕様はありませんね。
それほどまでしてインクを消費させて買わせたいのかとその貪欲さ下品さに憐れすら感じます。
余計なセンサー
ノズルはケチるくせに訳のわからん技術だけは一人前で、たとえば用紙をチェックするセンサーなどが付いていてこれが余計な仕事をしやがります。紙の種類など何でもいいから黙って指令通りに刷ればいいのに「指定の用紙と違います。ぴーぴーぴー」とエラーでまくりです。
あのな、お前らが想定していない印刷のやり方ってのも広い世の中にはあるんだよぴーぴーさえずりやがってと悪態をつきます。
想定外の使い方でなくてもやたらめったらエラーが出ます。ぴーぴーぴーロール紙をカットしますか、ぴーぴーぴー指定外の何たらかんたらで印刷を中止します、ピーピーピー用紙を正しくぴーぴーぴー。うるさいわこのボケ。
エラーの対処ができない
ロール紙印刷の紙送りに関しては4000PXも絶えずエラーを出していました。すぐに紙がよれるし用紙をセットしても勝手に巻き戻したり延々とはき出し続けたりしていました。
しかしそんなときはアジャスターみたいなレバーをがちゃこんと外せば用紙も取り出せるししわくちゃになっていても外してやり直せばいいだけでした。
PX-5Vを使ってみて初日、いきなりロール紙送りに失敗してしわくちゃ状態になりました。しわくちゃで紙も送れていないのに同じ箇所でじーこじーことインクをなすりつけています。「こりゃいかん。レバーはどこだ」と探しますが見当たらず、上蓋を開けて覗いていたら「蓋が開いていますぴーぴーぴー」と言ってくるし、何これ対処する方法ないのか、と呆れて電源ぶちと切りました。電源切っても紙が抜けなくて、無理にむぎゅーっと引っ張り出しましたよ。初日に壊しそうな乱暴な使い方ですがレバーがないから仕方ない(もしかしてどこかにレバーありますか?)
世の中、何のアイデアもないのに無理に商品開発してハイテク部品ばかり詰め込むと手動対処の道が閉ざされどうにもならないことになりがちです。
近頃は蓋の開かない使い捨てMacを売っているAppleに憤っていましたが、実はAppleに限らずどのハイテク企業もこのような路線なんですね、これが今時というやつなんですね。ブラックボックス化とか言うんでしたっけ。
と、横道にそれましたが、15年ぶりにロール紙プリンタを買って最新機種はどうなのかというと速度は前よりのろくなったしピーピーうるさいし、こんなもんかとちょっとがっかり感はあります。
エプソン謎の製品構成
個人的に必要なのはA3ロール紙印刷です。画質などはどうでもよろしい、どうせ線画程度の出力です。だからロール紙印刷できる機種を探しましたがこれが存在しません。
PX-5V2とか7V2とかは「写真愛好家モデル」みたいな、インクを湯水のように使ってでも美しいプリントを必要とする人向けのラインナップです。なぜかこれにロール紙印刷機能が付いていて他にはついていません。
簡易なプリンタのラインナップがあって、その中にA3ノビでインクは6色で使いつぶし用の安価なモデルがありました。これがぴったりそうでした。この程度でいいんです。ですがロール紙対応していません。
大抵のロール紙印刷を望むユーザーは写真高画質なんか求めておらず選択に苦しむことになります。
写真愛好家がロール紙で売り出しバナーを印刷するとも考えにくいし、いったい誰に向けて製品を構成しているのか謎が深まります。
さてお安いA3プリンタとははEP-4004という4000PXと兄弟みたいな型番のこれです。旧技術のジェネリックプリンタですか。
背面給紙ですから私はこう考えました。
「ロール紙を適当に設置して背面からスルスルと紙を送ればロール紙対応と書いてなくても印刷できるのでは?」
ところがこれが駄目なんですよねえ。忌々しいセンサーがカット紙の終わりをチェックしますからA3指定で印刷したら印刷が終わったときにその場で留めず紙を排出しようとして延々10m排紙しますね。
安価なモデルではロール紙の設定を意図的に組み込まず使用を制限しているということです。
実際には紙送りのローラーも精度が悪くロール紙に耐えられないとかいろいろあるでしょうが、何しろロール紙印刷を必要としているユーザーに最適な機種というのは存在しないということです。4000PXが如何に最適であったか思い知りました(よく見ると4004は染料インクでした。これは論外)
一般機でロール紙対応はエプソンだけ
まあしかしですね、PX-5V2と7V2という機種があってA3ノビのロール紙に対応しているからまだ救われます。他のメーカーではそういった機種自体が存在しません。すべて「大判印刷機」の括りになってしまいます。
EPSONだけがA3のロール紙対応一般機種を地道に作り続けてるので実際助かります。余計な機能や余計なコストに涙を呑んで「最低画質」の設定ができないドライバにイライラしつつインク垂れ流してロール紙印刷をしまくり仕事しまくり「4000PXはよかったなあ」と昔を懐かしむのであります。
実践
ということで悪態をつきながらもプリンタ故障で滞っていた作業を再開、目的を果たせればそれはそれで何でもOK。