ずっと開発中と公言されていたAffinity Publisherのベータ版がやってきました。
ベータ版で尚且つ英語版のみなので「何となくこんな感じ」ってのを掴むベータ版です。あまり深入りせずちょっと試してみましょう。
Beta版に合わせて、チュートリアルビデオも用意されました。
[追記注] AffinityはWindows版もあったんですね、ここではmac版の話をしています
ユーザーインターフェイス
新規書類を作ってみますと、インターフェイス全般はAffinityのPhotoやDesignerと同じ感じです。
Publisherではそれに加えて、かつてのPageMakerを思い出させるDPTソフトっぽい顔も覗かせます。
正直、Affinityソフトのインターフェイス回りの出来は良くないんです。何かと面倒臭い構成になっていて、細かな調整を行うツールが用意されていなかったり、ツール選択のショートカットが効かなかったり、セパレート表示の時にパレットにだけ影がなくぺたーっとしていて視認性が悪かったりウインドウリサイズが最適化されずただ巨大化するだけの仕様だったり、少々困ったちゃんです。このアプリ、基本アプリケーションウインドウの中で完結させようというWindowsの作法で作られていますからセパレート表示が特に使いにくく、あまりUIデザインを詰めて作られていないんですね。
余談:ウインドウリサイズの間抜けっぷりは特にPhotoで痛感します。Photoshopのウインドウリサイズはやっぱ優れてますよね。拡大縮小に追従して自由自在です。最適なサイズにもなりますし。設定で微調整もできますし。DesignerやPublisherなら100歩譲ってともかく、Photoのリサイズの不自由さはわりと致命的です。
UIの不出来について、応援しようと買った当初は「出たばっかだから今はこんなのだけど直してくるでしょ」と思ってましたが、黒いUIが明るくなったことを除けばまったくその気配もなく残念な結果でした。
Publisher
で、PublisherというくらいですからワープロじゃなくてDTPアプリを目指しているわけですね。私はDTPアプリには全然詳しくありません。InDesignなんか高機能すぎてあたふたしているだけです。ですのでまともな評価はきっとできません。でもBeta版ダウンロードしました。
日本語組版
Affinity Designerを見ても判る通り、文字の扱いに関してはあまり大したことができないと見込まれます。縦書き不可だし、現状デフォルトで禁則処理すら上手くできない場合があります。
禁則処理の設定はどこでやるんでしょうか。まだ英語版なせいもあって設定がどこにあるのかわかりませんでした。
Illustratorや、ましてやInDesign日本語版のような専門的な使い方は想定していないのだろうと思いますが(そのようなアプリケーションは大がかりで高額になります)、現時点Beta版では細かな調整や設定などはちょっと難しいことになっているようです。Illustratorとタメ張るくらいの出来になればもうそれは大喝采ですが現実は厳しいだろうと思われます。
それらしいパレットを触ってみましたが、普段ベタやアキのプルダウン選択に慣れてるので、やっぱりちょいとややこしい感じですね。細かい調整もどこかで出来るようになっている筈と思いますがまだよくわかりません。八分とか四分とか設定できるようになるでしょうか。ならない気がします。
尚、ベータ版ゆえ、ちゃんと動作せず画面が変なことになったりしますがそれはご愛敬。フォーラムでも既知です。
日本語に関する問題は他にもありますね。
まずKarabiner-Elementsが効きません。これが地味ですが強烈に痛いです。Betaが取れたら動いてほしいですねえ。あとAtokとの絡みで面白いことになりました。
「。」が行頭にきていることに関して「禁則処理が出来ていない」とか何とか、テキストを入力しようとしていたんですよ。すると勝手に変な文字がぷりぷりぷりと入力されてしまい笑えます。ところで推測変換になぜキングオブキングスが出てくるのか、推測変換はヤバいですね。禁則ショアって何ですか?聞いたこともない言葉が勝手に出てくるのはAtokの忌々しいところです。まあAtokの悪口はいいとして、この変な入力現象のあとMacもろともフリーズして強制再起動いたしました。Beta版だからこういうこともあります。気にしない(追記註: すぐに修正されると思って気にしないと書きましたが、こうした不具合は結局製品版直前のベータバージョンでさえ修正されませんでした)
Affinityが優位な点
AffinityがIllustratorより優位な点は、カーニングにしろ何にしろいろいろ選びながら即時に反映されるところですね。これはPhotoの画像処理でもお馴染みでAffinityの強みです。あとはそうですね、購入金額が安い上に無限レンタル方式でない買い切りであるという点です。ですから期待し、応援したい気持ちは強くあります。
Adobe Illustrator
Adobe Illustratorは高機能で、使う人によってその使い方はさまざまです。簡単なDTPソフトとして使う人もいます。私がそうです。少ないページ数のDTPや版下に使っています。パスの自由度が高くてデザイン制作しながら同時に版下を作ってしまえるという、InDesignより圧倒的に使い勝手がいいからです。私出版社じゃないですからそういう感覚になります。日本語組版の機能も、InDesighほどスマートでないにしてもかなりのところまで追い込めますからね。
Publisherは何の代わりになるか
PublisherがIllustratorの代替になってくれればめちゃんこ嬉しいのですが、PublisherがIllustratorを目指してるのかInDesignを目指しているのかPageMakerを目指しているのか、現時点ではちょっと微妙にわからないところもあります。
試しに触ってみたところPageMakerに近いかなと感じました。PageMaker を失って以来十数年困り果てていた私にとっては福音かもしれません。Illustratorの代わりになれなくてもPageMakerの代わりになるんならそれだけで大喜びです。
ただし現状日本語組版の機能はまったくないし日本語テキストは使い物にならないと言っても過言じゃないレベルで、そこいらのテキストエディタやワープロにも劣ります。まだベータ版ですので断言できませんが、現状のままでは日本でこれをDTPソフトと呼ぶことはとてもできません。
さらに・・・
そうなるともうひとつアプリケーションの開発に期待したいところがあります。それはデジタルイメージの管理ソフトです。これが現状ないから歪なことになってるんです。画像配置のツールを選んでダイアログが出てくるとがっかりですもんね。
イメージ管理ソフトとはもちろんApertureみたいなものを指します。現状、この世に優れたイメージ管理ソフトは存在しません。昔PageMakerがAldusだったころは画像カタログソフトがありましたがこのジャンルの製品はほぼ全滅しました。しかし今こそ必要です。そこでAffinityにはぜひApertureそっくりの画像管理ソフトを作ってもらって、PublisherやDesignerと連携できるようにしてほしいなと願望を持ってます。
が、フォーラムによると、一時期は開発しているという声も聞こえていましたが、最近はそういうのを開発する予定はないと宣言されているようです。
[追記2019年春]
その後何度かBeta版がアップデートされていますが、未だ日本語対応版ではなくほとんどアルファ版みたいな仕上がり。DesignerもPhotoも現バージョン(1.6.1)では日本語入力に関して大きく劣化というかバグ放置したまま修正もされません。ちょっとAffinity、ぐだぐだになってしまいましたね。最初は期待を込めて応援していましたがだんだんどうでもよくなってきました。
当分のあいだ様子見でしょう。
[さらに追記 2019年6月]
製品版直前ベータ版v1.7.0.376 テキスト入力の現状
ついに製品版が2019年6月に登場する模様です。正直、大丈夫か?と思っています。というのも、製品版直前の最終ベータ、現時点で最新のバージョンを試していますが、日本語に関しては改善が見られずボロボロです。変換中に矢印キーを伴う操作ができず入力されたテキストのカーソルが動いてしまうとか、変換ウインドウが画面にあってもキーボードで操作できないとか、句読点を入力して確定すると二個入るとか、不出来というよりバグまみれみたいな挙動のままです。そんなですから、禁則処理が実装されるなんて夢のまた夢、機能の充実以前の状態にあります。これで製品版を信用しろというのは到底無理な話ではないでしょうか。
いくつか実例を挙げておきます。このように、日本語入力は現状まったく使い物にはなりません。
追記ばかりしてきたので新たに投稿しました。テキストの謎挙動は改善されず・・・と思ったら一部改善できました。という話と反省も含めて、こちらです。