iZOTOPE RX7

iZOTOPE RX7 icon

iZOTOPE RX7がリリースされ、修復能力の高さに驚いています。

RX7 スクリーンショット

唐突に iZOTOPE ですが、マスタリング補助のOzoneとかノイズ除去や修復のRXなど、いろいろと定評あります。「昔に、いや数年前にこれを持っていたらなあ」とか思うほど有能です。

過渡期のお話

テープでの録音からデジタルへ移行する時期、その過渡期はとても長い期間に及びました。私はクオリティ度外視して新しい物に飛びつく癖がありまして、あーそうそう、コンピュータそのものやデジカメもそうなんですが、一気に移行するのが早すぎたというか、本来ぜんぜん使い物にならない時期なのに「これからはこっちだな」とさっくり乗り換えてあとで後悔しまくりというデジタル移行の歩みでした。

Soundtrack Proなど

という話は面白くなるのでまた別の機会に譲るとして、音源の修復やリマスターという難しい作業を、まだぜんぜんちゃんと出来ていない過渡期の時期に例えばSoundtrackなどを使ってやってしまい、その後事故でオリジナルファイルを失ったという経験があります。

Soundtrackのファイルは現在なぞのUNIXアイコンとなり開くことも中身を確認することもできません。Soundtrack Proにバージョンアップしたあと、いつの間にか前バージョンの書類をOSが読めなくしてしまいました。iMovieでもよくありますね。謎のフォルダがあって何だこれはと思ったら元はiMovieのプロジェクトファイルでした。Apple製のソフトに依存するとえらい目に遭うぞという一つの例です。

この話も面白くなるので別の機会に譲るとして、昔は波形ソフトでちまちまやっていたノイズ除去や修復を今の時代はRXを使って効率よくハイクオリティに行うことができます。

Soundtrack Pro icon

正直なところ、痛い目に遭った後も波形編集を懲りずにSoundtrack Proでずっとやっていました。ノイズ除去のコマンドなどもありますし今でもいろいろと有能です。これの代替ソフトないのかなーとずっと思っていましたがRXが部分的な答えでもありますね。知りませんでした。

iZOTOPE RX7

バージョンアップされたRX7は、Elements、Standard、Advancedの三種類ラインナップされていて、普通に音楽関係ならStandardでまあまあ十分かと思います。どんなことが出来るかというとそれはそれは色々ありますが例えば以下のような機能がありますね。多くはRX6と変わりないのでRX7が特別というわけでもありません。Advanced版では新機能が目立ちますのでインタビューやロケ音声などを扱うプロダクションでは積極的に RX7 Advanced を検討してもいいかもしれないですね。

基本の修復

  • De-clip 入力過多のクリップを修復
  • De-click デジタルエラー、機器干渉、短いインパルス・ノイズなどクリック除去
  • De-cracle 連続的低レベルのクリックの集合体を除去
  • De-hum 混入した低周波数のバズやハムの除去

これらは基本的なノイズやクリックの除去で、波形編集ソフトを使ってちまちまやっていた低品質な修復を効率よく賢くこなしてくれます。やり過ぎるとエグいので様子を見ながら少しずつ、でも確実に効果があります。これに加えてさらに以下のような今風の優れたモジュールがあります。

今どきの賢い修復

  • Spectral De-noise 固定のイズや音色的ノイズを分析し信号から差し引く
  • Spectral Repair 選択範囲の不必要な音を自然な音像を保ったまま修復

このあたりはほんとにもう優れもので、古い録音物やカビが生えて傷んだテープ音源の修復が現実味を帯びます。特にSpectral Repairはやり手で、選択範囲の周囲の音からノイズ箇所を上書きして修復します。Photoshopのスポイトツールのような感じで、瞬間的なノイズを押さえ込めます。これ最高ですよ。

調整や加工

さらにもうちょっと加工のレベルでも使えるモジュールがあります。

  • De-reverb リバーブや残響の衰退部分を調節したり空気感を除去する
  • Music Rebalance ミックス内のベース、打楽器、声、その他の四つを検知して分離、個別にレベル調整を行う (RX7の新機能)

残響音を上手に減らしてくれたり、特定楽器のレベル調整ができてしまったりします。魔法ですかこれ。これらは修復というレベルとは言えませんが、ライブの生録を聴きやすくしたり、2mixしか残っていないけどバランス調整したいという無茶苦茶な要求にある程度応えてくれます。これらを下処理した別ファイルをいくつか用意してmixしていくとこれまで諦めていたカスい音源も蘇ってくる可能性を秘めています。

モジュールチェイン

RX7の新機能で便利なのは Module Chain で、これは複数のモジュール設定を登録して一気にレンダリングする仕組みです。修復ですから注意深くやる必要はありますが、個々のモジュールを並べて処理できるのは便利。

module chain

このモジュールの発展系みたいな感じの Repair Assistant という新機能もあります。基本的なノイズ処理を解析して自動でやってくれます。修復を自動に任せるのも怖いですが、シンプルな使用に特化すれば有効かと思います。

修復

私は以前、美術や文化財、出土品などのレプリカ彩色や修復の仕事をしていたこともあり、修復とか復元とか結構好きです。で、音楽の修復ソフトで何をやるのかというと、主に昔の音源の修復ですね。これをやります。長年音楽もやってきて、古いものなどどうでもいいと思っていましたがこんな面白いソフトがあるんなら現存している音源をちょっと蘇らせてみてはどうだろうと思ったりすることがあります。上手く行けば発売しますが、どう考えてもただの記録保存用ですね。

修復を除去する手立てを残しましょう

美術の修復も考え方は同じですが、いい修復方法があったとしても、時が経てばさらによい技術が得られるかもしれないし、修復する範囲の考え方も変わるかもしれません。不可逆的な修復はやってはいけないことです。修復そのものをいつでも除去できるようにオリジナルを保存しておくのは鉄則です。

私はオリジナルを事故で失って、Soundtrackを使った酷い出来の修復ファイルの残骸を聴きながら「こんな酷い修復なら何もしない方がマシだった」と嘆いております。そのようなことにならないよう、RXの出来がいいからと言って過剰に修復してオリジナルの味を壊してしまわないよう、またオリジナルの保管を忘れないよう皆さまもご注意くださいませ。

 

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