USBハブの話とACアダプターの話、もともと二つの別の記事の下書きがあったんですがくっつけました。衝撃の結末に備えよ。
USBハブの話
簡単そうで選ぶのが難しいUSBハブです。ポイントは電源。安価なUSB3.0ハブでどれを選べばいいでしょう。
ディジー・チェーンできない
古くからMac使ってる人にとって外部機器の接続にディジー・チェーンを使うのは常識でした。SCSIもそうだしFireWireもそうでした。外部機器は珠々繋ぎして使うものと昔ユーザーは皆思っていたかもしれません。私もそうで、それが当たり前だと思っていました。USB機器を初めて接続した時、ディジー・チェーンできないことを知って驚愕したものです。
ディジー・チェーンができないから複数の機器を繋ぐにはUSBポートが足りず、USBハブというポートを増やす機械が必要になります。小さくて安いUSBハブがたくさん売られていますね。たくさんありすぎて何を買っていいやら判らなくなりますが、何でもいいというわけにはいかないです。
電源が必要
何でもいいと思っていたのは昔はUSBポートなんてせいぜいカードリーダーやペンタブやプリンタを繋ぐためだったからですね。USB2.0が出てきて、めちゃめちゃ遅いけどハードディスクが繋げるようにもなりました。このあたりから電源の問題が出てきました。
自分で電源を持たないポータブルHDDはUSBから電気の供給を受けます。1つのUSBポートを3つも4つも分岐させるハブは、ポートは増やせても電力は増やせません。ハードディスク一台くらいなら何とかなっても複数繋げると電気が足りずにしゅるるんと画面から消えてしまいます。
「そうか電気がいるのか」とやっと合点して、その後はACアダプタ付きのセルフパワーのUSBハブを選ぶようになりました。
USB2.0のころはポータブルHDDにしても緊急時にたまに繋ぐくらいで常用しないし、セルフパワーのUSBハブであれば特に困ることもありませんでした。
USB3.0以降
それがUSB3.0の普及で変わります。それまでハードディスクの接続はFireWire一択でしたが、USB3.0の速度はFireWireに肉薄、場合によっては上回るので、HDDを接続するのが俄然現実的な選択となります。同時期にAppleがFireWireをポイ捨てしたこともあって、USB3.0接続への移行が一気に進むことになりました。
さてそこで大きな問題が立ちはだかります。
FireWireはディジー・チェーンで珠々繋ぎ出来るからポートが足りないと感じることはなかったのですが、USBはディジー・チェーンできないので、まったく穴ポコが足りません。
そこでUSB3.0ハブが必要どころかないと始まらんということになりまして、最初は焦って適当なやつを買いました。
「ポートが足りないんだからなるべくたくさんポート数があるやつがよい、ただし条件はセルフパワー」と、その程度の考えでハブを選びました。
電気が足りないセルフパワー
電源が付いているハブなら、当然ポート数の分は電源が確保されているはずだと思っていたんです。ところが現実は違っていました。
7ポートのUSBハブを買って機嫌よくHDDやDVDドライブをつなぎ替えてみたら、まあなんと頻繁にマウント解除されるようになりました。
繋いでいるHDDは当然電源を持ったやつです。ポータブルじゃないんですよ。なのに消えます。原因はよくわかりませんが想像できるのは電力不足です。
必要な出力
ここに来てはじめて「セルフパワーなら何でもいいというわけではなかった」と気づきました。このとき、ポート数が多くてもまったく電力を確保できないタイプの自称「セルフパワーハブ」があることも知りました。
で、この使っている7ポートセルフパワーのUSBハブをやめて、別の4ポートハブ2個と買い換えてみようと。
いろいろ懲りたので今度はみっちり製品を調べたんです。新しく買ったやつはウェブサイトに情報を出していて、それによると4ポート合計3600mAが確保されています。1ポートあたり900mAあるのでOKと考え、選びました。念のために同じようなスペックの別商品を1個ずつ。結果どちらも想定通り動作して、もうマウント解除されることもなくなりました。
ついでにもうひとつ良いことがあって、なんとハブに繋いでいるのに起動ディスクとして使用できました。
起動ディスクOK
Macで起動ディスクにするにはハブ経由ではなく直接本体に繋がなければならないと思い込んでいました。これまでは実際そうでした。しかし新たに買ったやつはハブ越しに起動できます。これは思ってもみない収穫でした。USBの穴ポコが足りないのでこれまでは起動ディスクを切り替えるのがたいへん手間でした。
この優秀なやつはエレコムの4ポートハブです。U3H-A408SBKとU3H-T410SWHなんですが、まあ商品はいずれ切り替わるしそもそも自分は他の機器を知らないし時事的な今だけの話題でありますが、このハブ、めちゃ安いのに優秀です(と、私は思ってます)
エレコム USB3.0 ハブ 4ポート ACアダプタ付 セルフ/バス両対応 マグネット付 ホワイト U3H-T410SWH
エレコム USB3.0 ハブ 4ポート ACアダプタ付 セルフ/バス両対応 U3H-A408SBK
エレコム USBハブ (サイトには情報も詳しく載ってます)
そんなわけで、それまで使っていた使い物にならない7ポートハブはそこいらにポイと捨てて、あとはもうその存在も忘れてしまいました。
ACアダプターの話
話変わってACアダプターです。話変わりすぎやろ。と思いましたね。その通り、話はまったく変わります。
ACアダプターはわからなくなるもの
ACアダプターは大抵の製品に専用のが付属していて、家中ACアダプターだらけですが、まずたいてい何が何のアダプターなのか判らなくなります。そのため知恵のある人はACアダプターに何のACアダプターなのか判るように工夫をします。工夫はできないけど知恵がちょっぴりあるかもしれない私のような粗忽な人間はアダプター自体に白マジックでメモを直接書いていたりします。しかし肝心なやつには書き忘れて結局何が何のアダプターなのか判らなくなり、時として間違ったアダプターを挿してめちゃ気に入っている今では売っていないエフェクターをお釈迦にしてしまったりします。
たくさんの種類
ACアダプターには普通の人間が想像するのを遙かに超える種類があり、電流電圧プラスマイナス、その組み合わせはさまざまです。これに先っちょの太さまで考慮すればとてつもない種類があるとわかるでしょう。
そして具合の悪いことにACアダプターはよく壊れます。さらに、メーカーはいつまでも製品をサポートせず、ACアダプターが壊れるころにはすでにメーカーサイトにまったく情報がなく手に入れる術もなく途方に暮れることになります。
ACアダプターと差し込む穴ポコ周辺にはいくつかの重要な情報が書かれていることがあります。電圧やセンターがプラスかマイナスかなど、最低限の情報はそこに見つけることができるでしょう。そういうのがまったく書かれていない酷い製品も中にはあります。先日アダプターを失ったフォステクスの小型ミキサーなんかそうでした。穴ポコ周辺に何にも書かれていないんですよ。
と、そんなわけで電圧とか電流とかプラスとかマイナスとか差し込み口のサイズとか、全部の情報が揃うことはほぼありません。世の中には「なぜこんないい加減なものごとが長く放置されているのだろう」と思うことが多いですがACアダプターの乱立もそのひとつですね。
緊急事態発生
先日、出演する前日に使用するオーディオインターフェイスのACアダプターが壊れました。
慌てふためき、代替になる汎用アダプターを探しまくります。Amazonのお急ぎ便でも間に合わぬ差し迫った状況で、市内の電気屋に片っ端から電話して探しますがこれがまあまったく在庫なんか置いていなくて、これねー、昔なら電気屋街にパーツ屋があって、どんなものでも手に入りましたよねえ。通販全盛時代、小売り潰しの政策のなれの果て、一見便利になったが実は選択肢が削りに削られ多様性という人類文化が資本主義という独裁に奪われ全統一という方向にまっしぐら、ゆーにてぃー、ゆーにてぃーという「タイムマスター」に出てくる呪いの言葉を思い出すそういう一つの実例として、何を書いてるのだわし。と、あの、そういうことでACアダプターが手に入らないんです。
どこにも売ってない
量販店では1個2個程度なら汎用アダプターを置いていますが、携帯時代にふさわしい小さな電圧のかっすいやつしかありません。「12Vで1A以上のアダプタですか、、そんなのは置いてないですねえ」と店員さん。
通販では探せば売っているところを見つけられます。しかし本日今すぐ必要なんだが。というときに手に入れる術は現代もうありません。小売りは壊滅し知識ある店員もいません。ひとしきり嘆きます。
USBハブとACアダプターの話
翌日の演奏に間に合いそうもないまま時間が流れ、半田ごてで壊れたアダプターの修繕を試みるも惨敗、もうこうなったら演奏プログラム全変更、アナログフリー演奏で乗り切るか!って思いながら鳥散らかったデスク回りを見渡します。連日の多忙のせいで机まわりは無茶苦茶なことになっていてこの一角だけゴミ屋敷かという状態です。空のダンボールがいくつか散乱し、ゴミ箱に入りきらないゴミが紛れ込んだりしています。
いろんな諦めの境地から「ゴミ掃除でもするか」と手に取ったのがこないだ捨てた電気の足りない7ポートハブです。ポイとゴミ箱に転送しようとして目に止まるハブのACアダプター。
「電気の足りない7ポート、いったいどんなアダプター使ってんのやろ、見てみたろ」と裏の表記をじっと見ますと、3000mAの出力だと書いてあります。「7ポートで3000mAしかないんかい、そりゃ電気足らんはずや、舐めとんのかこの製品おいちょっと待て3000mAついでに12Vおまけにセンタープラスわおっ」何と、探し求めていたスペックがそこに記されています。
USBハブは使い物になりませんが壊れたわけでもなくACアダプターはもちろん生きてます。一日中探し回ったまぼろしのアダプターは足下のゴミの中にありました。あと残るは先っちょの太さだけです。しかしもう心は舞い上がっています。最悪、先っちょの太さが違っても先だけ付け替えたら何とかなるはずです。ですが先っちょの太さもぴったりフィットでした。翌日使用するオーディオインターフェイスの穴ポコにがっちり食い込みます。
これが奇跡でないとすれば日頃の信心深さのせいやな。などとまったく意味不明の言葉を思い浮かべながら、改めてオーディオインターフェイスから音を出し、翌日の演奏のための準備を始めます。
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デジタルデカ事件簿 第一話 USBハブとACアダプターの話 完